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BeLoved.【蜜月記】
第7章 世界はそれを女王様と呼ぶんだぜ
「…ごめんね、滑った」
苦笑混じりに彼は言った。手を布団についたつもりが、誤って、着崩した自分の浴衣についてしまったらしい。
バランスを崩した彼と共倒れ、身体が繋がったまま、彼に乗っかるような形になってしまった。
「あ…っ」
彼の先端が当たる箇所が変わり身震いする。…ほら、ここも気持ちいい。蕩けた顔を晒すわたしに対し、彼の表情は…怪訝一色。
挿抜も止まった。…何故?恐る恐る尋ねたら、謝罪と共に不服そうな声が返ってきた。
「上に乗られるの好きじゃないから」
「…どうして?」
少しの間の後、彼は小さく息をつき、未結には話すね、と前置きして教えてくれた。
「嫌なこと思い出すの」
「嫌って…」
「初体験がね、無理矢理乗られた逆レイプだったから」
「!!」
──以前のわたしならここで退いている。
『嫌なこと』思い出させてごめんなさい。
そんなふうに恐縮しながら。
だけど今は違う。退いたりなんかしない。
だって『ここ』は──わたしだけの場所。
整った面貌に、だらしなくはだけられた浴衣から覗く肌。月明かりに照らされる…妖艶な彼の全てを見下ろせる、『ここ』は。
その時、いつの間にか緩んでいたのか──いや、最初から緩かったのか。手を拘束し続けていた帯が解け、ぱさりと寝床に落ちた。
「未結、起きるよ?」
優しく言われても、首を左右に振った。
──だめです。させません。
彼が上体を起こそうとした、その間際。
自由になった両手でわたしがしたこと。
それは、彼の身を押し倒すことだった。
「…何してるの?」
「…だめです、麗さま。このままです」
「…聞こえなかった?嫌だ、って」
月明かりの下、切れ長の瞳が射抜こうとしてくる。
だけど今のわたしには──効かない。
わたしの身体に『いいところ』なんか存在しない。
貴方が、貴方『たち』が触れるところが気持ちいい。
───だから
貴方にも…貴方『たち』にも、そうであって欲しい。
そしてわたしが感じ『させて』あげたかった非日常感。
それらは、今わたしの手にあるものが叶えてくれる。
「…何のつもり?未結ちゃん」
言うことをきかなかった代償は、拘束。
そして、抑えきれない独占欲と、笑み。
「全部塗り潰してあげます」