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BeLoved.【蜜月記】
第8章 流麗荒亡 1
【おまけ】
「で、お前ら結局仕事サボったのね」
───さて、今の時刻は…7時。夜 の、7時だ。
無事に帰宅を果たしたもう一人の『彼』。流星さまは、食卓を挟んでわたしの斜向かいに腰掛け、険しい表情で夕食を召し上がっている。
あれから。
案の定、わたしは今日のお仕事ができなくなった。
彼の腕から解かれた時には、全身が疲れ果てて…足腰は立たなくなっているだろう予想通りの展開になったのだ。
「サボりじゃねぇ。自主休業だ」
「同じだバカた麗」
しかしそれは彼も…麗さまも同じだったようで。
行為後揃ってシャワーを浴び、再びわたしの部屋に戻ったまでは良いのだけれど。その後、仲良く爆睡してしまったのだ。
目が覚めたら夕方で。飛び起きようとしたのは、鉛のように重い自分の身体と、横から伸ばされた手が許さなかった。
それは、既に目覚めていた彼のもの。反対側の手で操作していたスマホを脇に退け、それはそれは爽やかなお顔で…絶句する報告をしてくれたのだった。
「夕飯、流星に何か買って来いって伝えたから」
─────────────❧
「出張明けの俺様をパシリに使うたぁいい度胸だな」
そんなわけで晩餐(?)は…コンビニ弁当である。
眉間に皺寄せ悪態吐きつつも、こうして人数分きっちり、お茶まで付けて買ってきてくれるあたり、やっぱり流星さまは優しい。…俺『様』…
縮こまりつつも食欲には抗えず、ありがたくご相伴にあずかった。あぁ、ひと口ひと口が美味しい。…そう思ってしまうのは、空腹だったからと…わたしの頭の上でお馴染みのやり取りが交わされているのもあるからだろうな、きっと…。
「よくそんなくだらねー話題で盛り上がったね」
「いやでもな流星、俺今日初めてこれ聞いてくるやつの気が知れたんだよ。理屈じゃなかった」
「あっそ。…つーか麗、お前さ」
くだらねー話題。…『仕事と私、どっちが大事?』だ。流星さまも聞かれるの嫌いそうだな…なんて呑気に思っていたら。空気が一変した。
「お前はどーでもいーけど、未結には"仕事"させろよ」
馴れ合いに満ちた空気を裂く、鋭い声。
「俺が賃金払う理由奪うな」
箸を持つ手が、いや、全身が固まった。
わたしからは見えないけど、きっと彼のその視線も、鋭いものになっているんだろう。…怖い。