この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
BeLoved.【蜜月記】
第10章 流麗荒亡 2
紅潮し火照り上がった頬が冷め、呼吸が落ち着いた頃になっても。わたしを包んでいたのは・・・羞恥心でも悦楽でもない、この上ない充足感だった。
『いとおしい』。彼がどれだけわたしを好きで、愛してくれているか。見えないからこそ感じ取れたものは、羞恥心や快楽だけじゃなく・・・愛情もあったから。まだ繋いだままでいてくれている左手を、キュッと握り返した。
「未結、すげーかわいかった」
「…あ…」
「あーんなでけー声で "見て" て叫ぶし」
「なッ」
からかいにムキになって振り返れば。彼はもはや見慣れた、悪戯っ子のような笑顔でわたしを見下ろしながら、左手で髪をたくし上げていた。…ん?…左手??
「え、あれ?ずっと繋いでくれてましたよね??こっちの手」
「は?左手?俺ずっとこーやってたよ?」
わたしの右手を、その… 、ナニができる体勢に誘導した後、彼は自分の左手は湯船の外に投げ出していたらしい。
…え?ちょっと待ってください…。じゃあ…
今も繋いでるこの手は 誰 の 手 デ ス カ ? ! ?
「つかおまえ、頭洗うんだろ?早く上がれよ。逆上せるよ?」
「うご、うご、動けな…っ、おば、おば、おば手、がっ、手」
「何で涙目なんだよ。おまえやっぱ、訳わかんねーわ。未結」
恐怖でヘタり込んだわたしにも、容赦なく。目の前の彼は心底呆れたような目で見下ろし言い捨て、溜息をついた。
…いや、それはわたしの台詞ですよ。流星さま…。
本当に本当に、ご主人さまたちの不在時に仕事をサボったことは、ここまでの仕打ちを受けねばならぬほど重罪だったのか…
本当に本当に、もうしません。わたしは心に固く誓ったのだった。