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第1章 終わりと始まり
◇◇◇

絢音は貧しい農村で暮らしていたが、まだ幼い頃に母を病で亡くし、父親と二人暮らしをしていた。
ところが、父親はたまに日銭を稼ぐ程度でまともに働こうとはせず、酒や博打に明け暮れる体たらくだった。

絢音は物心ついた頃から家事をこなし、よその畑仕事を手伝っては賃金を貰い、それで僅かな食料を得ていた。

だが父親は改心する事はなく、益々酒に溺れていき、絢音がちょうど10歳の誕生日を迎えた頃、些細なことで絢音に手をあげるようになった。
絢音が得た僅かな賃金を取り上げ、それで酒を買って飲んだが、そんな事が長く続けられる筈はない。
しまいには1文無しになった。
めぼしい物は全て売り払ってなにもない。
父親は自暴自棄になって漠然と絢音を見ていたが、絢音は亡き妻に似た色白で端正な面立ちをしている。
暫く見ているうちに、ふといい事を思いついた。

「絢音、父さんの為に働いてくれるよな?」

いつもなら、酒が切れると苛立って怒鳴りつけるのだが、珍しく笑顔で話しかけた。

「うん……」

絢音は働くのは嫌ではなかった。
機嫌のよさそうな父親を見たら、つい嬉しくなって素直に頷いた。



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