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第14章 えにし(縁)
「俺はよ……」

辰は異常に気持ちが昂っていた。

「はい……」

絢音は何を言い出すのか、期待と不安、両方を抱きながら返事をした。

「お前の前で……散々ひでぇもんを見せてきた、今思や……なんて事をしたんだって思う、こんな俺を慕ってくれるお前は……俺にとってかけがえのねぇ存在になった、ただ……俺はこんな稼業だ、いつどうなるか保証はねぇ、だからよ、こんな事言う資格はねぇとわかってる、それでも言わねぇと気が済まねぇ」

辰は後悔を口にしたが、言いたい事は他にあった。

「っと……、なにを……ですか?」

絢音は辰が滅多にない位真剣な顔をするのを見て、不安の方が大きくなってきた。

「お前を……俺の女房にしたい」

辰は思い切って言った。

「えっ……」

絢音は予想だにしなかった言葉に驚いた。

「やっぱり無理だよな、わりぃ」

すると、辰はバツが悪そうに取り消した。

「あ、ちょっと待って……、私なります、辰さんのお嫁さんになりたい」

絢音は慌てて訴えた。

「本当にいいのか?俺は女にあんな真似をする男だぞ」

しかし、辰は確かめるように聞く。
あまりにもあっさり承諾したので、今度は辰の方が不安になったのだ。

「わかってます、でも……もうしないって、そう言いました」

絢音は辰の事を信じている。

「お前を養ってやったから、それでだろ?だとすりゃ見合いでもすればいい相手が見つかるぜ」

辰は『養ってやった』……たったそれだけの理由で自分を選ぶのは、間違いだと思った。

「無理です、だって私は辰さんの事を全部知ってる、知らない人と一からなんて出来ません」

けれど、絢音はいい事も悪い事も、全部ひっくるめて辰に惚れている。

「そうか……、そりゃそうだな、全部見られちまった……、お前、こんな汚れた男で構わねぇのか?」

辰は自らを恥じて自信なさげに聞いた。

「私は辰さんの事ずっと好きでした、誰よりも一番信じてます」

絢音は迷う事なくキッパリと言い切った。

「そこまで言ってくれるのか……」






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