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縁
第9章 悪い癖
辰は素知らぬ顔で返事を返し、絢音のそばに歩いて行った。
絢音のわきに胡座をかいて座り、ポケットからタバコを出す。
「辰さん……、お姉さんの事……好き?」
絢音は白々しい態度に苛立ち、率直に聞いてみた。
「お前……いきなりなに言い出すんだ、なわけねぇだろ」
辰はギクッとしたが、動揺を隠して否定した。
「私……わかるんだから、辰さん、また悪い事をしてる」
だが、いくら隠しても無駄だ。
絢音は辰と一緒に暮らし、赤裸々な暮らしぶりを見てきた。
百合子との事がバレない筈がない。
「悪い事?そんな事ぁなにもしてねぇぞ」
それでも辰は盛大にとぼけた。
「じゃあ……、なんでいつもお姉さんを送ってくの?」
絢音は納得しなかった。
今までオープンにしていたのに、百合子との事を隠しているからだ。
辰は良かれと思ったのだが、逆に不信感を抱かせていた。
「なんでって……、そりゃたまたまだ」
しかし、辰は話すつもりはない。
「嘘つき」
絢音は珍しく辰を責めた。
「あのな、俺がなにをしていようが、お前がとやかく言う事じゃねぇ、それよりな、お前は勉強して学をつけろ」
辰は絢音の事を思いやってはいたが、根本的な生き様まで変える事は出来なかった。
「勉強か……、はい、わかりました……」
絢音はしょんぼりして返事を返した。
街の旅館に泊まった夜、辰に女として認められたが……まだ14才だ。
辰との約束まであと2年弱ある。
それに……。
家事をやっているとはいっても、自分は辰に養って貰ってる身分だ。
文句を言う事など、出来るはずがなかった。