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第9章 悪い癖
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週の真ん中、絢音はこの日も百合子に勉強を教えて貰っていた。
難しい計算を解いていたが、あと10分で勉強は終わりになる。
辰は絢音に百合子の事を言われた日から、部屋にやって来て百合子を連れ出すような真似はしなくなった。
でも絢音は……2人はこの後絶対会うに違いないと、そう思っている。
目の前の問題なんか上の空だった。
立ち入った事を聞いたら、百合子が気を悪くするかもしれない。
聞こうか聞くまいか迷ったが、聞かずにはいられなかった。

「あの……、百合子お姉さん」

決心して話しかけた。

「ん、なに?」

「っと……、百合子お姉さんは……辰さんの事、好きなの?」

一番気になる事を率直に聞いてみた。

「え……?」

百合子は不意の質問に驚いた。

「あ……、その、ごめんなさい、やっぱりいいです」

絢音は百合子がびっくりした顔をするのを見て焦り、尻込みしてしまった。

「ううん、いいの、ね、絢音ちゃん、私が……なにをしているか知ってる?」

百合子はもしかして……と思いながら問いかけた。
まだ14才だが、辰の事を好きになる可能性は十分ある。

「はい……」

絢音は湯女について詳しくは知らなかったが、多分、街角に立つ女達と同じような事をしているんじゃないかと思っていた。

「うん、だったらわかると思うけど……、私は誰かを好きになって、普通に恋したり結婚したりするのは無理、だから……辰さんに頼まれた事をするだけ」

百合子は本心を明かすつもりはない。
辰に惚れていても、それは一方通行だとわかっている。
それに……何故なのかは分からないが、辰は絢音を自分のそばに置き、ここまで育ててきた。
絢音を大切にしているのは一目瞭然だ。
その絢音に余計な事を言うつもりはなかった。






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