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第6章 6
「だから、それは有り得ないと言っているだろう」


「どうしてそんなこと言えるの!」


紗織は今にも噛み付きそうな様相で男を睨んだ。
しかし男は、紗織がいくら激昂したところで、蚊ほども気に止めない様子だった。


「遺伝らしくてな。
 射精した精液中の精子は、その総数が少ない上に、正常なのも少ない。
 絶好のタイミングで性行為が出来たとしても、
 医学的な手でも加えない限り、受精が成立することはまず無い。

 実際、俺も人工授精で生まれた。
 つまり、いくら中で出そうが妊娠の確立はゼロに等しいというわけだ。
 それを聞いても不満か?」


男がいつもの淡々とした口調で説明して言った。


「えと・・・・・えっと・・それ・・それは・・・・・
 そりゃ・・・、あ、あなたには分からないでしょうけど、
 自分の体の中に、そんな得体の知れない・・ものを出されるのって、
 すっ・・・ごく気持ち悪いんだから!」


紗織は男の口から出された意外な言葉に困惑して、
とにかく反発することに専念した。
言ってしまった後で、さすがにその返答は無神経だったように思え、
男が何かを喋り出そうとするのを感じて、びくりと紗織は身を竦ませた。


「気持ち悪い?
 気持ち良いの間違いじゃないのか?」


男は大して気にも止めなかった様子で、紗織をぐいともう一度引き寄せた。


「一昨日も、昨日も、そして今のも、
 俺に中出しされた途端、ひくひく締め付けながら身を捩じらせて、
 ひいひい言いながらイっていたのは何処のどいつだ?」


腰に腕を回して強引に抱き寄せたまま、男が紗織の耳元で低く囁く。
それが紗織に、どんなに効果的であるかを十分承知の上でだ。


「そんな違・・・・
  (う・・そう言われると・・そういう・・気も・・・)
 違うわ!・そんな・・・分からない・・・そんなの分からない」


自分の中の言葉も否定するように声を揚げる紗織の唇に男が唇を重ねる。
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