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女喰い
第7章 助け舟
江戸払いを申し渡された日から2日後に出発となった。
朝日が眩しい早朝、お美代は旅装束を纏った五作を見送る為に長屋を出た。
弥八郎と江衛門も一緒だ。
お美代は五作と並んで歩いたが、五作はちっとも悲しそうにしてない。
普通の人間なら、五作の様子に違和感を覚えるが、お美代には分かっていた。
関所までついて行くわけには行かず、少し手前でお別れとなった。
2人は最後に手を握り合い、別れを惜しんだ。
「どうか元気で……無事に」
お美代は五作がよい働き口を見つけ、病気などせずに平穏に暮らせる事を願っていた。
「うん、おら、力があるから大丈夫だ」
五作はあっけらかんと言う。
「うん、そうだね……、五作さんは優しいから」
お美代は五作に悲しげな顔を見せたくなかった。
無理矢理笑顔を作って言ったが、辛い日々の中で密かに愛し合った事は忘れ難い。
困った時はいつも手を差し伸べてくれた、その優しさには感謝するばかりだった。
「じゃ、おら行く」
五作はそっと手を離し、背中を向けて歩き出した。
「あ……、五作……さん」
お美代は泣きそうになるのをぐっと堪えた。
「お美代ちゃん、元気でー! おらも頑張る」
すると、少し歩いたところで五作が振り返って叫んだ。
五作は満面の笑みを浮かべている。
「うっ……」
それを見たら……お美代は遂に我慢できなくなり、堰を切ったように涙が溢れ出してきた。
五作はお美代が泣いている事には気づかず、踵を返して意気揚々と歩いて行く。
お美代と別れるのは寂しかったが、皆のお陰で命拾いした事を純粋に喜んでいた。
それに……いつか必ず、再びお美代と会えると、五作はそう信じて疑わなかった。
「お美代ちゃん……、心配ねぇ、五作なら上手くやれる」
弥八郎は天真爛漫に歩む五作を見送りながら、お美代に話しかけた。
「はい……」
お美代は涙を拭って頷いた。
「お美代ちゃん、なんなら……もう暫く拙者が居候してもよいぞ」
江衛門は自分からお美代の傍に歩み寄って言った。
「おい、江衛門……お前」
それを見た弥八郎は何か言いかけてやめた。
朝日が眩しい早朝、お美代は旅装束を纏った五作を見送る為に長屋を出た。
弥八郎と江衛門も一緒だ。
お美代は五作と並んで歩いたが、五作はちっとも悲しそうにしてない。
普通の人間なら、五作の様子に違和感を覚えるが、お美代には分かっていた。
関所までついて行くわけには行かず、少し手前でお別れとなった。
2人は最後に手を握り合い、別れを惜しんだ。
「どうか元気で……無事に」
お美代は五作がよい働き口を見つけ、病気などせずに平穏に暮らせる事を願っていた。
「うん、おら、力があるから大丈夫だ」
五作はあっけらかんと言う。
「うん、そうだね……、五作さんは優しいから」
お美代は五作に悲しげな顔を見せたくなかった。
無理矢理笑顔を作って言ったが、辛い日々の中で密かに愛し合った事は忘れ難い。
困った時はいつも手を差し伸べてくれた、その優しさには感謝するばかりだった。
「じゃ、おら行く」
五作はそっと手を離し、背中を向けて歩き出した。
「あ……、五作……さん」
お美代は泣きそうになるのをぐっと堪えた。
「お美代ちゃん、元気でー! おらも頑張る」
すると、少し歩いたところで五作が振り返って叫んだ。
五作は満面の笑みを浮かべている。
「うっ……」
それを見たら……お美代は遂に我慢できなくなり、堰を切ったように涙が溢れ出してきた。
五作はお美代が泣いている事には気づかず、踵を返して意気揚々と歩いて行く。
お美代と別れるのは寂しかったが、皆のお陰で命拾いした事を純粋に喜んでいた。
それに……いつか必ず、再びお美代と会えると、五作はそう信じて疑わなかった。
「お美代ちゃん……、心配ねぇ、五作なら上手くやれる」
弥八郎は天真爛漫に歩む五作を見送りながら、お美代に話しかけた。
「はい……」
お美代は涙を拭って頷いた。
「お美代ちゃん、なんなら……もう暫く拙者が居候してもよいぞ」
江衛門は自分からお美代の傍に歩み寄って言った。
「おい、江衛門……お前」
それを見た弥八郎は何か言いかけてやめた。