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女喰い
第6章 弥八郎
お美代は足を踏ん張って抗い、キッパリと断った。

「おい、そりゃねぇだろ、俺はもうすっかりその気だ、な、そこの茶屋へ入ろう、しっぽりと楽しもうぜ」

男は斜め前の茶屋にお美代を連れ込むつもりだ。

「や、やめてください……、離して」

「いいから来な」

「や、いや……」

お美代は抵抗したが、肩と腕を掴まれてズルズルと茶屋の入り口へ連れて行かれた。

「観念しな、さ、来い 」

男はお美代の背中を押して暖簾をくぐろうとした。

「おい、待ちな」

後ろから不意に声がかかり、男は足を止めて振り返った。

「なんだよ、てめぇは」

傾奇者の男は苛立つように言い、お美代は恐る恐る振り向いた。

「あ……」

すると、そこにいたのは弥八郎だった。

「その女はうちの店の者だ、おめぇ、今無理矢理連れ込もうとしてたよな? 」

弥八郎はお美代の事を覚えていた。

「なんだと? そんななりで店? ああ、女郎屋か、なんだ、この女は女郎だったのか? だったら別にかまやしねぇだろ」

傾奇者の男は弥八郎の出で立ちを見てお美代を女郎だと思った。
弥八郎は傾奇者と似たような格好をしているからだ。

「女郎屋じゃねぇ、廻船問屋、郷田屋だ、うちの使用人を返して貰おうか」





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