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女喰い
第6章 弥八郎
「そうかい、わしが余計な事を言ったらなんだからな、ま、気を落とさずに……、生きてさえいればいい事もある」

口入れ屋の主人は、お美代が女郎屋に売られる事を想像し、元気づけるように言った。

「はい……、あの、ではこれで……」

お美代は再び頭を下げ、挨拶をして口入れ屋を出た。
空になった風呂敷包を折り畳んで懐にいれ、色町の方へ向かって歩いて行く。
お美代は用事を頼まれた後で、この機会にお菊に会いに行こうと思っていた。

賑やかな通りを歩き、様々な店を眺めながら歩いていると、やがて雰囲気の違う場所に出た。
門があり、柄の悪い番人が座っている。
番人はお美代をジロッと見た。
お美代はなにか文句を言われるかと思ったが、番人はなにも言わずに座ったままだった。

門の中に入ったが、ここは小さな遊郭だ。
通りの両側には女郎屋が立ち並び、見世に遊女の姿がある。
お美代は独特の雰囲気に緊張しながら玉屋を探した。

「よお、あんた」

キョロキョロと左右を見回していると、突然後ろから声がかかった。
足を止めて振り向けば、傾奇者らしき男がニヤついた顔で傍にやってきた。

「あ、はい……」

「なかなかのべっぴんだな、しかもまだ随分若いんじゃねぇか? なのに腹に子を仕込まれてるのか、へへー、そんなガキみてぇな面ぁして、やるじゃねぇか」

男は下卑た事を言ってお美代の肩を抱く。

「あの……、やめてください」

酒臭い匂いがして、お美代は警戒した。

「いいじゃねぇか、こんな場所をうろついて、女郎屋に用があるのか? 」

男は遊郭にはそぐわぬ清楚な雰囲気を持つお美代に、邪な欲を膨らませていた。

「はい、友達を探してます」

お美代は男から離れたかったが、兎に角正直に言った。

「女郎屋に友達か、女郎屋は沢山ある、そう簡単にゃ見つからねぇ、俺が一緒に探してやるよ、その前に……少し付き合ってくれ 」

男は調子のいい事を言い、お美代の肩を掴んで歩き出した。

「あの、いいです、自分で探しますから……」





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