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女喰い
第6章 弥八郎
男は後ろ手に腕をねじ曲げられ、顔を歪めて喚いた。

「だからやめろと言っただろ、いい加減にしねぇと、そこらの岡っ引きにひき渡すぞ」

弥八郎は男の腕を捻りあげて言った。

「い"っ!あ"ーっ! わ、わかった……、女は諦める、離してくれ」

傾奇者の男は必死の形相で訴える。

「ああ、だったら行け」

弥八郎は男を突き放し、男はふらついて転けそうになったが、小刀を握って逃げるように走りだした。

「で、おめぇは……お美代っていったか? 」

お美代は脱兎のごとく走り去る男を唖然と見ていたが、弥八郎はお美代に目を移して確かめるように聞いた。

「はい……」

なにを聞かれるか大体見当がつき、お美代は俯いて返事を返したが、たった今、弥八郎に助けて貰った。

「あの……、危ないところをありがとうございました」

何はともあれ、頭を下げた。

「ああ、当然の事をしたまでだ、で、何故こんなところをうろついてた」

弥八郎は何故色町にやって来たのか気になった。

「はい、一緒に働いてた友達が、女郎屋で働いてるんです、たまたま番頭さんに用を頼まれて……ついでに会いに行こうと思って」

お美代はすんなりわけを話したが、弥八郎は彦兵衛の事をよく知っている上に、彦兵衛に対して反感を抱いている。
なんとなく話しやすかった。

「そうか、あのクソ親父、相変わらず女郎屋に売っぱらって汚ぇ銭を受け取ってるんだな、あのな、わりぃ事ぁ言わねぇ、会わねぇ方がいい」

弥八郎は吐き捨てるように言うと、お美代に忠告した。






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