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女喰い
第6章 弥八郎
「っと……、それはどうしてですか? 」

お美代は何故なのか疑問に思った。

「女郎になったら何もかも変わっちまう、まぁー、お前もその腹だからな、俺からすりゃ呆れて言葉もでねぇが……、この遊郭ってとこは牢屋も同じだ、門に番人がいただろ? 」

「はい」

「遊女が逃げださねぇように見張ってるんだ、自由なんてありゃしねぇ、お前は今のところ自由の身だ、そんな身で友達に会ったりしたら、友達を悲しませる事になるぜ、それでも会いてぇって言うなら止めやしねぇがな」

弥八郎は遊郭の事情を話し、お美代に判断を任せた。

「あっ……、はい、そうですか」

お美代は門番の話を聞き、その役目を初めて知った。
確かに……自分は身重の身体になってはいるが、妾という立場に置かれるのだから、お菊とは違ってまだ自由がある。

「どうする? 行くなら連れてってやる」

弥八郎は親切に言ってくれる。

「いえ……、あの、でしたら頼みたい事が」

お美代は会う事を諦め、代わりにお願いしてみようと思った。

「なんだ、言ってみな」

「はい、わたし手紙を書きます、それを渡して貰えたら……」

「おお、構わねぇ、渡してやる、で、どこの店だ? 」

「はい、玉屋でお菊ちゃんと言います、あ、あの、今の名前じゃなく昔の……」

「ああ、分かってるよ、お菊って名で働いてたんだな?」

「はい」

「任せな、届けてやる、折を見て店に寄るわ」

弥八郎は頼み事を快く引き受けてくれた。

「ありがとうございます」

お美代は有難く思いながらお礼を言ったが、とても不思議な気持ちになっていた。
弥八郎は彦兵衛の息子で傾奇者みたいな格好をしているが、物凄くまともだからだ。
それに、弥八郎は背が高く端正な顔立ちをしていて、でっぷりとした彦兵衛とは全く違う。
きっと気の病に罹った母親似なんだと思ったが、母親の世話は長年勤める年長者がお付でやっているので、確かめる術がない。
なんにせよ、この度は助けて貰った事もあり、お美代は彦兵衛とは似ても似つかぬ弥八郎の事を、信用できる人間だと感じていた。




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