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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第19章 疼き④
「その考えを捨てて欲しかった。人間たちの都合のいいように歪んだ思考を植え付けられ、傷つけられた心を癒して欲しかった。そして……自分の意思を強く持って欲しかった」

「自分の意思……ですか?」

 脳裏にアンジェラの言葉が浮かんだ。二人とも、言葉は違うが同じことをフィーネに願っていた。

 道具ではなく、人として意思をもって生きて欲しいと。

 フィーネの反芻に、魔王が頷く。 

「嫌なら嫌だと言えばいい。したいことがあるならすればいい。感じたことがあるなら素直に口にすればいい。そんな普通を、お前は自身に許さない。道具だから、主に服従すべきだからと。だからお前の心が癒え、自分が素直に出せるようになるまで、求めないと決めたのだ」

「そう、だったのですか……」

 主の言葉を拒絶する、という選択肢はフィーネにはない。
 魔王から求められれば、どれだけ嫌だと思っても、必ず応じていただろう。

 彼はその考えが歪んでいると思い、フィーネが考えを変えるまで抱かないと決めたのだ。
 
(私が必要なくなったから、抱かなかったわけじゃなかった。むしろ私を気遣って……)
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