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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第20章 疼き⑤
 そう教えられてきたフィーネにとって、自分が抱える欲望を正直に口にするのは憚られた。

 しかし彼女の答えを急かすように、魔王の舌先が耳たぶを舐めると、身体の中でせき止められていた感情が限界を超えてあふれ出した。

(もう……我慢できない)

 物欲しそうに眉根を寄せ、唇が求めることを口にする。

「だ、抱いて……ほしい……です」

「道具としてではなく? 力を与える役目ではなくか?」

「……でなければあんなこと……いたしません……」

 目の前の男との行為を妄想しながら、自分で慰めていたことを思い出し、恥ずかしさからぎゅっと両目を瞑った。

 でもこれ以上、自身が抱える気持ちを抑えることは出来ない。
 全てを吐き出し、自分がどんな気持ちで待っていたのか知って欲しい。

 蚊の鳴くような震え声で、必死で言葉を紡ぎ続ける。
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