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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第20章 疼き⑤
「あなた様に……求められなかったことが、とても悲しかったのです……毎晩、身体が疼いて辛かったのです……またあの時のように、求めて頂きたかった……」

「そうか……辛い思いをさせたな」

 後ろから抱きしめる腕に、さらに力がこもった。
 彼女の気持ちに共感する優しい声色に、心が嬉しさで締め付けられて苦しくなる。

(伝えられた……私の本当の気持ちを……)

 心臓が激しく脈を打っている。
 思った以上に、本心を口にする緊張があったようだ。

 でもずっと堪り続けていたモヤモヤがなくなり、スッキリしている自分がいた。聖女として教え込まれてきた心の呪縛が、少し緩むのを感じたとき、先ほど理解出来なかった魔王の言葉を思い出した。

(心を癒せと言われたあれは……このことだったのね)

 気づかないうちに、自分の心はたくさん傷つけられていた。
 傷つけられすぎて、痛みが分からなくなっていた。
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