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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第9章 アンジェラ①
 その時、扉の向こうから誰かの話し声が聞こえてきた。

(誰? 何を話しているか、ここからじゃ分からないけど……)

 内容は聞き取れなくとも、大きな声だということは分かった。
 誰かが怒っているのだろうか。

 フィーネはベッドから抜け出すと、両足を地につけた。

 全身を改めて見ると、白く柔らかな肌触りの寝衣に変わっていた。身体も、清められている気がする。

 清め着替えさせてくれたことに感謝しつつも、見知らぬ誰かに、情事後のあられもない姿を見られたかと思うと、恥ずかしくて顔が赤くなった。
 
 一歩、歩みを進める。
 初めての交わりだったのにも関わらず、身体に酷い痛みはない。ただ、重い疲労感が鉛のように身体にのしかかっていた。

 扉には鍵が掛かっておらず、小さな軋みをたてながら開いた。

 誰もいない。
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