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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第12章 忠誠②
 ディザニア国へ連れてこられた以上、何があってもここで生きるしかない。

 この地で自分に出来ることは、純潔を奪い、主となった目の前の男に力を与えて尽くすこと。人間を裏切り、魔族につくこと。

 力を注ぐ道具として、ただ課せられた使命をまっとうすること。
 それだけだ。

 だからアンジェラが彼をそう呼んだように、フィーネもまた目の前の男を王として呼んだ。この男に忠誠を誓う意思を表すために。

「……お前の言い分は分かった」

 少しの沈黙ののち、魔王はそう言い放つと、フィーネの身体をベッドの上に押し倒した。視界には彼女の身体に跨る男の顔が映る。

 こちらを見下ろす魔王の表情から、少しの怒りと寂しさが見えた気がした。

(どうしてこの方は……いつも悲しそうに私を見るの?)

 一体、何が彼をそうさせているのだろう。
 自分は、皆がそうあれと求めてきた役割を、果たしているだけなのに。
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