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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第12章 忠誠②
 先ほどの二人の会話を思い出す。

 魔族の敵であるフィーネに対し、二人がとても優しくしてくれるのが不思議だった。だが、聖地にいたときには決して与えられることのなかった心遣いは、決して不快ではない。

 心を読まれたかのようなフィーネの言葉に、魔王の瞳が見開かれた。頬を撫でる手の動きが止まると、驚きで見開かれた瞳が細められた。

「分かった。でもこれだけは言っておく。私は、力が欲しいわけでも癒しが欲しいわけでもない。ただ純粋にお前自身が欲しいだけだ」

「……私自身を? 仰っている意味が分かりかねますが……それはどういう……」

 赤い瞳をぱちくりさせながら、首をかしげるフィーネ。

 自分自身が欲しいなら、それは力を欲していることと同じではないか?
 なら何故そんな回りくどい言い方をするのか?

 疑問が湧く。
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