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Q 強制受精で生まれる私
第11章 4.5度目
「…これがあるってことは…まさか!?」

 私は硬貨が入っていた方とは別のポケットをまさぐり、注射器状の目的の物を取り出す。実物を目にした私は、まるで地獄に垂らされた蜘蛛の糸にすがり付く様に、タンポンという名の小さな光をひしと抱き締める。

「やった…良かった…これがあれば…あの男の精子を…」
 
 パンドラの箱に残った希望を見つけた時のように、私は嬉し涙で思わず震えてしまう。とはいっても使い方はよく覚えていない。パッケージに書いてあった簡素な説明文しか読んでいないし、あの男が戻ってきそうだったこともあって朧気なイメージしか思い出せない。

「とりあえず…膣内に入れれば、いいんだよね?」

 私は自身に言い聞かせるように独り言を不安気に漏らしながら、先端を局部に近付ける。鈍く丸いプラスチックが持つぬるさが、冷めやらぬ熱を持ち続ける下の唇とキスをする。物質と肉体の温度差がある接吻はくすぐったく、思わずこのまま擦り続けたくなる衝動に駆られる。

「だめ。今はこんなことしている場合じゃない。集中しないと…」

 私は注射器の様にタンポンを持ち、深呼吸してからロケット状の先端を膣内に入れていく。ぬるぬると滑り入っていくその感覚はアレを彷彿とさせ、快感と寒気で身震いしてしまう。気がおかしくなりそうなのを、お腹をつねることで防ぎながら、正気のまま奥への挿入に成功する。

 後はこのピストン部分みたいなのを奥深くまで押すだけ。そうすれば綿の様な吸着具が膣内に放たれ、先生の毒を吸いとってくれる。これで一時しのぎにはなるはずだ。私は覚悟を決めて患部へ向けてゆっくりと押し出す。

 アレみたいな形の物から、私の中に放たれる…そうイメージするだけで身体が震えてしまう。それのせいなのか、単に緊張からくる手の震えのせいなのか、あろうことか肝心の挿入に失敗してしまう。タンポンを支えていた手を無意識に戻してしまい、浅い位置で綿が射出されてしまう。

 タンポンは私に侵入するべく騙していたかのように、私の中でその裏の顔を現す。狭苦しい入口付近に出された不安定なタンポンは、首を絞められた寄生虫の様にもぞもぞと蠢き、綿のチクチクとした肌触りで私を凌辱する。
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