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Q 強制受精で生まれる私
第12章 4.9度目
「そう…あっそう!! もういいわ!! もうたくさんよ!! もう償いもなにもいらない!! もう二度と会わない!! ふざけた縁もこれで終わりよ!! さよなら!!」

 この場所に一分一秒だっていたくない。その想いが強すぎて、浅はかにも札束が入った封筒だけを鷲掴みして、身ひとつのまま勢いよく病院から飛び出す。陽気に包まれた暖かな世界が私を出迎えるも、今の私にはそれらに忌々しさしか感じることができない。

 街へと続く田んぼ道を駆ける。急ぐ必要なんてないのに、どこに行く宛もない不安から、一刻も早く見知った土地に着きたい一心で息を切らしながら走り続ける。色んな感情が混ざりあってメルトダウンしそうになるのを、酸素を絶え間なく吸って燃焼させていく。そうでもしないとどうにかなってしまいそうだった。

 遥か遠くにあるビル街の景色が少しずつその背丈を伸ばしていく。いつもの光景のはずなのに、太陽がビル郡の背後にあるせいか、その姿は幻覚みたいにゆらゆらと揺らめいている。それらが死溢れる砂漠の中の蜃気楼にどうしても見えてしまい、果たしてこのままたどり着くことができるのだろうかという不安に駆られてしまう。

 私以外何もかもが無くなり、崩壊した世界に一人取り残されたのか。それとも何もかも失って、何の変哲もない世界に置いてきぼりにされたのか。そのどちらかも。はたまたそのどちらでもないかも分からぬまま、私は目の前に続く道をひたすら走り続けることしかできなかった。

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