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Q 強制受精で生まれる私
第12章 4.9度目
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 信じるものは救われるという言葉をどこかで聞いた気がするけど、確かにその通りだなと名も知らぬ公園のベンチに腰をかけながら確信する。ゆらゆら揺らめいていた街の景色は幻などではなく、ちゃんと現実の物だったのだから、信じるということは大事なんだなと実感する。

 それと同時に蜃気楼の対義語はオアシスではないという事実も、この街は容赦なく私に突きつけてくる。警察署、ホテル、病院…この街には私が行くべき場所に溢れているにも関わらず、私が求める物はどこにも無い気がして仕方なかった。

 私は信じたから救われた。
 だけど救いの先には安住の地があるとは限らないとまでは知らなかった。昔の偉い人は不親切だ。

 何の気力も持てず、どこに行こうかと考えることもできず、ただひたすらに茜色の空をぼんやりと見つめ続ける。公園にはここを住みかにしているのか、汚ならしい恰好をしたホームレスと思わしき人達がせっせと寝床を準備し始める。私よりも何も持っていないはずなのに、物に溢れた彼らの方が大金を持つ私よりも遥かに人間として真っ当に思えてしまう。

 私も近い内に彼らの一員になっていくのだろうなという予感が芽生え始める。もしそうなったら彼らは私を暖かく迎えてくれるだろうか? 貴重な女だと言って慰み物としてまわされてしまうだろうか?

 どちらにせよ我関せずよりはいいな、なんて思ってしまう。
 無関心はもう懲り懲りだ。

 現実は非情であり、自由なんて物はこの地にはどこにも無いと昔から決まっている。自由なんてものがこの世にあるのだとしたら、それはこの眼前に広がる空だけなのだろう。だけどこの空はあまりにも広すぎて、鳥一羽すら出逢える確率はかなり低そうに思えて仕方ない。出逢えたとしても全然自由でない壊れた私が、自由を謳歌する鳥と仲良くなれるはずがない。


 自由も。安らぎも。希望すらも。
 何ひとつ無いこの世界。


 私はこの先どうすればいいのだろう…

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