この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Q 強制受精で生まれる私
第14章 5...? 度目
「あぁ…ほとぎ…俺の…俺のー」
「ねぇ。痛いよ…痛いってば。」
痛覚を訴える感情の無い声でようやく我に返ったのか、先生は慌てて私を締め付けから解放する。割れたガラスの破片で体のあちこちを切っているのが、先生の血染めの白衣から伺える。その赤く染み付いている跡の大きさや濃さから、酷くは無さそうだけど跡に残りそうだな、なんて少し落胆してしまう。
「あっ…あぁ…ごめん…俺…悪気があった訳じゃなくて!! そのっ!!」
「…いいよ。そんなに謝らなくても。そんなに怒ってないし。」
「それでも、ごめん。俺が悪いんだ。俺が…」
本当に何も怒ってない、というよりあらゆる感情が無いのに、先生には私が不満を抱いているという幻覚が見えるらしくひたすら謝罪を続ける。そのうるさい行為にすら苛立ちを覚えない程、私の心は酷く冷えきって静まり返っていた。
自我の芯が冷えきっているせいか、単純に裸で濡れたままの体でいたせいか、急に身を切る様な寒さが込み上げてきた私は耐えきれず体を縮ませて身震いしてしまう。
「…寒い。」
「えっ!? 寒い…あぁっ!! そうだね!! ごめん気が利かなくて!! 今すぐ体を温めないと!!」
そう言うやいなや先生は私の膝裏に腕を回し、もう片方の腕で肩甲骨辺りを支えるかのように力強く上方に持ち上げる。力も入らない空気の様な存在の私は、抵抗することもなく易々とリフトアップに身を任せる。
いわゆるお姫様だっこという状態でどこかに連れていかれる私の頭の中に浮かんだのは、白馬の王子様と姫という女の憧れではなく、首根っこを噛まれ運ばれる未発達の子猫のイメージだった。
ゆさゆさと揺らされながら私が運び込まれた先は、大量の水気と熱気の残り香を帯びた記憶に新しい場所だった。当たり前だ。ついさっきシャワーを浴びたばかりなのだから覚えていないとしたら、それは認知症を疑った方がいい。にも関わらず重度の痴呆症を患っている先生は、せかせかと服を脱ぎ捨て風呂を貯め始める。
「ねぇ。痛いよ…痛いってば。」
痛覚を訴える感情の無い声でようやく我に返ったのか、先生は慌てて私を締め付けから解放する。割れたガラスの破片で体のあちこちを切っているのが、先生の血染めの白衣から伺える。その赤く染み付いている跡の大きさや濃さから、酷くは無さそうだけど跡に残りそうだな、なんて少し落胆してしまう。
「あっ…あぁ…ごめん…俺…悪気があった訳じゃなくて!! そのっ!!」
「…いいよ。そんなに謝らなくても。そんなに怒ってないし。」
「それでも、ごめん。俺が悪いんだ。俺が…」
本当に何も怒ってない、というよりあらゆる感情が無いのに、先生には私が不満を抱いているという幻覚が見えるらしくひたすら謝罪を続ける。そのうるさい行為にすら苛立ちを覚えない程、私の心は酷く冷えきって静まり返っていた。
自我の芯が冷えきっているせいか、単純に裸で濡れたままの体でいたせいか、急に身を切る様な寒さが込み上げてきた私は耐えきれず体を縮ませて身震いしてしまう。
「…寒い。」
「えっ!? 寒い…あぁっ!! そうだね!! ごめん気が利かなくて!! 今すぐ体を温めないと!!」
そう言うやいなや先生は私の膝裏に腕を回し、もう片方の腕で肩甲骨辺りを支えるかのように力強く上方に持ち上げる。力も入らない空気の様な存在の私は、抵抗することもなく易々とリフトアップに身を任せる。
いわゆるお姫様だっこという状態でどこかに連れていかれる私の頭の中に浮かんだのは、白馬の王子様と姫という女の憧れではなく、首根っこを噛まれ運ばれる未発達の子猫のイメージだった。
ゆさゆさと揺らされながら私が運び込まれた先は、大量の水気と熱気の残り香を帯びた記憶に新しい場所だった。当たり前だ。ついさっきシャワーを浴びたばかりなのだから覚えていないとしたら、それは認知症を疑った方がいい。にも関わらず重度の痴呆症を患っている先生は、せかせかと服を脱ぎ捨て風呂を貯め始める。