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Q 強制受精で生まれる私
第14章 5...? 度目
 真っ暗だった世界が徐々に明るくなっていき、あの世の風景が眼前に広がるはずだった。

 一番新しい記憶として覚えている景色と何ら変わらない風景を前にして、あぁ私は死ななかったんだと察する。

 背まで廻る腕。押し潰される胸。肩にのし掛かる頭と荒い息遣いと嗚咽…そのどれもが温かく、妙な成分として触れている箇所から身体中にかけて、血流と共に駆け巡っていく。ぴくぴくとこそばゆい感覚が全身を走り、あぁ私は生きているんだと悟る。

 生きているという実感を得るために、私は大きく深呼吸をする。吸い込まれていく空気がじりじりと肺や気管支をいたぶり、吐き出されると共にどっと体を鉛のように重くさせる。死ぬのも生きるのも辛く苦しいものだと感じつつも、今の私は触れれば壊れてしまいそうな程の命を前にして、猛烈な幸福感に満たされていた。

「…できない…おれには、できない…好きだ…愛している…君のいない世界なんて…俺には、耐えられない…お願いだ…もう、どこにも行かないでくれ…側にいてくれ…頼む…」

 ボロボロと泣きながら必死に懇願するかのように呟く先生を、私はひしと抱き締めて答える。先生も私の意思を受け取ったのか、それ以上何も口を開くことなく、ただ私の腕の中で泣きじゃくるだけだった。

 言葉なんか要らない。
 こんな回りくどいプロポーズなんかされなくても、私の答えは最初から決まっている。

 出逢うべくして出逢った運命の二人は、歪な道の果てに、愛の勝利をもってようやく結ばれたのだった。

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