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Q 強制受精で生まれる私
第15章 6.0 度目
 人は何故自身だけでなく他人の皮膚の感触を体感したくなるのか。先生は何故私に固執するのかが、目の前の私と瓜二つの人形に触れたことでようやく理解できた気がした。散々この身で味わってきたはずなのに、この麻薬に等しい快感は他者だけが味わうことができる特権だということが歯痒くて仕方ない。

 一心不乱に私を貪っていたあの人はどんな心地がしたのだろう…夢の中だというのにじわじわと下腹部の熱を高めていく私は、私そっくりの人形のあらゆる所に手垢を付けて、その感触を追体験しようと探る。目の前の私は死に行く人の様に冷たい体をしており、少しでも力を加えたら壊れてしまうガラス細工みたいに、今にもその命は砕け散りそうだ。

 朝焼けを迎えるロウソクの火の様に、このまま消えて無くなってしまうのでないだろうかと頭の隅で思いつつも、内心は何も心配なんてしていない。

 目の前の私は、まだ産まれたばかりで息をしていないだけ。
 長い長い胎動から、外の世界へ目覚めていないだけ。
 それだけのことだなんて、私自身が誰よりも分かりきっている。
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