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Q 強制受精で生まれる私
第15章 6.0 度目
 長き眠りに付くお姫様の目を覚まさせるのは王子様のキス…なんてお伽噺の常套句があったなぁ、なんて思っているとドンドンという鈍い音が部屋の向こうにあるドアの方から聞こえてくる。どうやら麗しの王子様とやらが来たみたいだ。

「ほとぎ!! そこにいるんだろ!! 開けてくれ!! あの電話何があったんだよ!? 開けろって、ほとぎ!!」

 王子様のおの字どころか、レの字が付く最低最悪な非人がどうやら救出に…否、人拐いに来てくれたらしく、私は嬉しさのあまり口元をへの字に曲げる。目の前の私の右手には見覚えの無いスマートフォンが握られており、誰かとの通話が終了した画面がひび割れたディスプレイに写し出されいた。

 あの女が死ぬ前にこれで命乞いをしたんだろうけど、救急車や警察ではなく、よりにもよってこの人を呼んだというのが、いかにも私らしくて笑えてくる。

 あの人達。ふんぞり返っているだけで役に立った覚えないし…あんなに冷たい態度を取っていたくせに、結局最後は先生にすがる所が、私とそっくりで片腹痛い。憎さ百倍で思わずその顔を踏みにじりたくなる衝動を、目の前の私は私だと自身に言い聞かせて自制する。

 親の仇かという程にドアを叩く音は、カチャッという拍子抜けしそうな程に軽い音を境に聞こえなくなる。鍵が掛かっていない無用心なドアを開け、ドタドタと走り寄る音を強めながら、先生は人形の私を間近にする。
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