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Q 強制受精で生まれる私
第3章 1.5度目
 病院までは10分程で着いた。結構な距離があったはずなのに、人っ子一人いないのをいいことに先生が車をとばしたため正確な距離を掴むことができなかった。

 診察室に通された途端、昨晩の出来事が脳裏によぎり反射的にえずく。そんな私を見て先生は心配する素振りすら見せず、強制労働の内容を淡々と説明していく。

「さて。昨日お話した通り浜園さんには受付ともう一つ、診察の立会、補助をしてもらいます。」

「…何にも知らないですけど。私。」

「いやなに。補助と言っても私が指示したことだけしてくれればいいので、そう難しい物ではありません。受付自体も患者さんに診察表を記入させたり、私が言った番号呼び、料金の支払いとこれまた難しいことではありませんよ。とはいえ初めてのことで不安でしょうから、私も全力でサポートさせて頂きます。」

 何故私が強姦魔の言うことを素直に聞き入れることを前提にしているのか理解に苦しむが、しぶしぶ二つ返事で承諾する。先生は「いいお返事で大変嬉しく思います。」と皮肉なのか本心からなのかよく分からない返事をすると、部屋の時計を見てあぁこれはいけないと呟くと慌てて白衣を着る。

「開院時間まであと少しありません。急ぎ足で申し訳ありませんが、業務内容を教えるのでついてきて下さい。」

 さっきまでの不気味な落ち着き具合はどこへやら。先生はバタバタと慌てだし、人目につかない隅に山積みされている書類の山から必要な物を探しだした。

 机の中といい整理ができない、いい加減な人間なのだなとつくづく思っていた矢先、あぁそうだこれ、と言って白い棒を私に差し出してきた。銀色の丸い切っ先がナイフで脅すかの様に私につきだされる。
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