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Q 強制受精で生まれる私
第4章 1.9度目
「失礼致します。病院で大声を出さないで下さい、恥ずかしい。」

「あぁ、申し訳ありません。ひとつお願いがありまして…」

 部屋には先生と二十歳前後の女性が向かい合わせでいた。女の人は泣きそうな顔をしているが、それは羞恥心やら恐怖心やらが混ざった複雑な表情をしていた。小動物の様に小刻みに震えて怯える彼女を見て、私は先生をゴミを見るような目で鋭く睨み付ける。

「うん?…あっ!! 勘違いなさらないで下さい!! この患者様が検査に恐怖心を抱いてしまって困っているんですよ。」

「…何が、『勘違い』なんですか?」

 怒り心頭の私を余所に、先生は若い女性の患者さんに検査を勧める。

「お見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ありません。ここ最近、生理痛が酷いとのことでしたね。」

「はい…最近、お腹の下辺りがズキズキと痛むのです。」

「失礼を承知でお聞きしますが、ここ最近セックスをされましたか?」

「…はい。彼が気持ちいいからと。ゴムをつけずにそのまま…ピルは服用したのですが…」

「それはいけませんね。避妊さえすれば等とお考えなのでしょうが、性病感染予防のためにもお相手には必ずゴムの着用をするように忠告して下さい。…さて、もう一度言わせて頂きますが、月経痛、いわゆる生理痛でお悩みということなので改めてピルを処方致します。しかし、子宮頸部や内膜に炎症がある可能性もあるため、内診を受けられることを推奨します。」

「内診、ということは…体を触られたり、痛みがするということですよね?」

 女性の患者は再び怯えた表情で、弱々しく先生に問い出す。いくら相手が医者で、必要なこととはいえよく知りもしない男に触られるのは誰だって嫌だろう。ましてやその相手は訳もなく私を犯したレイプ魔なのだ。先生はこの患者にも、私と同じことをするつもりなのだろうか。

「申し訳ございません。お気持ちは察しますが、当院には私以外の医師がおりません。痛みは私の腕にかけて最小限に抑えますが、お恥ずかしい話、羞恥心につきましては私にはどうすることもできません。ですので、看護師を側につけさせますので少しでも安心頂ければと思います。」

「…分かりました。お願いします。」
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