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Q 強制受精で生まれる私
第4章 1.9度目
 では内診台の方へ、と言って立ち上がる先生の腕を無理矢理掴んで器具を保管してある部屋に連れ込む。さすがに今のは聞き捨てならない。

「なんですか? まだ怒っているんですか?」

「ふざけないで下さい。誰が看護師ですか。ここまでやらされるなんて聞いてませんよ。」

「そう言わずにお願いしますよ。勇気を振り絞ってこの病院まで来てくださっているんです。患者様には死力を尽くすのが医者の使命というものです。」

「あなたの金づるを助けるつもりなんて毛ほどもありません。どうせ、私みたいにあの人もー」
「お待たせして大変申し訳ありません!! 看護師の準備が整いましたので、内診台にお座り下さい。」

 言い終わる前に、先生は私ごと部屋を飛び出て無理矢理看護師として私を紹介する。まだ出会って二日目だけど、都合が悪くなると先生はいつもこうだ。強引に事をすすめようとする。今まで一人きりでやっていたのも、きっとこの性格のせいなんだろう。

「…初めまして。看護師の浜園と申します。」

「あ…初めまして…」

 しばし互いを見つめ合って沈黙を貫いていると、先生が横から小さな紙を手渡す。『カーテンを閉めるから、下半身を脱いで内診台に座る様に患者に説明して。』と書かれており、たどたどしい口調でそのまま説明する。昨日は無かった目隠し用のカーテンはいつの間にか用意されてあり、その中で女性は恥ずかしそうにもぞもぞと下着を脱ぎ出す。

 双方の状況が見える様に、カーテンの間に待機するように指示された私は、先生に大きめなバスタオルを渡される。なんですかと口を開こうとすると、先生は人差し指を口元に当てて、しぃーと口を尖らせる。喋るなということらしい。代わりに先生はホワイトボートを取り出し『それを患者の下半身にかけて。』と書いて私に見せてきた。どうやらこれで私に指示を出し、あたかも看護師みたいに演じてもらうらしい。

「あの…よければ、これ、お使い下さい。きっと…恥ずかしさも、少しは紛れると思います。」

「えっ!! あっ…ありがとう、ございます。」

 どこか落ち着かない表情の彼女の下半身にバスタオルをかける。端から見ても極度に緊張しているのが伝わる。私はこの気まずい空気と、相手があのレイプ魔だということ、これからこの人に何をするのだろうかという心配が混ざり合い心臓が張り裂けそうだった。
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