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Q 強制受精で生まれる私
第1章 0度目
胸に付けられたプレートには、『佐渡 麻良』と書いてあった。何と読むのだろうと一瞬思ったが、名前の上に小さく『さど あさよし』と振り仮名があったため、すぐに疑問は解消した。双方の名前が知ることが出来た安堵からか、私は椅子に強く寄りかかった。背もたれが大きく倒れる。
…しかし、覚えがない名前だ。名前だけでも分かれば何か思い出せるかもと思ったけど、相変わらず私は闇の中だった。私は本当に、つい数分まで正常だったのだろうか。
…怖い。おかしくなりそう。
「えぇと、では浜園さん。問診票によりますと不妊に長年お悩みをかかえているとのことですが、当院以外で治療を受けたことはありますか?」
私は言葉に詰まった。どこか別の病院に行ってたかはおろか、自分が不妊の治療でこの場にいることすら覚えていないのだ。不妊…不妊の相談で来ているということは…ここは産婦人科ってことでいいんだよね…?
「あぁ、これは申し訳ありません。ナイーブな話ですし、答えたくなければ構いませんよ。今時セカンド・オピニオンなんて当たり前ですし、どういう治療をなされていたのか気になっただけですので、お気になさらず。」
その後も先生に何か服薬しているか、他に持病が無いか等複数質問されたが、そのいずれも答える気はないため、曖昧に受け流した。そもそも、名前以外何も思い出せないのだから答えられるはずがない。先生の質問攻めは、私の記憶がいつになっても戻らない異常者だという事実を突き付けるだけだった。
…しかし、覚えがない名前だ。名前だけでも分かれば何か思い出せるかもと思ったけど、相変わらず私は闇の中だった。私は本当に、つい数分まで正常だったのだろうか。
…怖い。おかしくなりそう。
「えぇと、では浜園さん。問診票によりますと不妊に長年お悩みをかかえているとのことですが、当院以外で治療を受けたことはありますか?」
私は言葉に詰まった。どこか別の病院に行ってたかはおろか、自分が不妊の治療でこの場にいることすら覚えていないのだ。不妊…不妊の相談で来ているということは…ここは産婦人科ってことでいいんだよね…?
「あぁ、これは申し訳ありません。ナイーブな話ですし、答えたくなければ構いませんよ。今時セカンド・オピニオンなんて当たり前ですし、どういう治療をなされていたのか気になっただけですので、お気になさらず。」
その後も先生に何か服薬しているか、他に持病が無いか等複数質問されたが、そのいずれも答える気はないため、曖昧に受け流した。そもそも、名前以外何も思い出せないのだから答えられるはずがない。先生の質問攻めは、私の記憶がいつになっても戻らない異常者だという事実を突き付けるだけだった。