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Q 強制受精で生まれる私
第6章 2.5度目
「もう結構です!! あなた達に助けを求めた私が馬鹿だったわ!! さようなら!!」

 私は向こうの返事も待たずに交番の扉を乱暴に開け、外に飛び出す。憤怒と情けなさで胸一杯の私は、ひたすら見知らぬ街を行く宛もなく爆走する。肺が千切れる寸前まで走りきると、脚の力が抜けてどこかすら分からぬ路地裏で座り込む。

 どうして?
 何で私だけがこんな目に遭わなければならないの?
 私が女だから?
 男は皆、あんなにも女に酷い存在なの?
 それに彼氏か夫か分からないけど、どうして私を助けに来てくれないの?

 私のことを探してくれている人は誰もいないの?…

 疑問に次ぐ疑問が止めどなく頭を駆け巡り、その疑問に何一つ答えが出せない自分が情けなくて涙が溢れる。これら全て、記憶を失くしたのが悪いというのだろうか? だったら今すぐ、このざらざらしたコンクリートの壁に頭を打ち付ければ、全て解決するのだろうか?

 私は無機質な壁に向かって打ち付けようと、頭をできるだけ後ろへ引く。後は勢いよく壁にぶつけるだけだ。だというのに、体は何故か言うことを聞いてくれない。ゴチンという音と共に皮膚が裂け、骨が響き、鮮血が吹き出る…その様な光景はあってはならないと脳が緊急停止をかけているかの様に、ピクリとも前に出せない。

 その見えざる手に、何を馬鹿げたことを、と抵抗したけど、結局私は体からの指令に勝てず自傷行為を諦めざるを得なかった。

「何で…意味分からない…こんなこと…あり得ないよ…」

 何一つできない私はその場で泣き崩れるしかなかった。人っ子一人通らない路地裏で私は、誰かに聞かせるかの様にこの世への呪詛を込めた嗚咽を垂れ流す。数十分は途切れることなく続いたはずなのに、誰一人声をかけてくれる者はいなかった。

 たった一人。いや、たった一つの目を除いて。
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