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Q 強制受精で生まれる私
第6章 2.5度目
 涙でにじむ視界にキラリと光る物が見える。
 一通り泣き晴らした私は、チカチカするそれが気になり、裾で涙を拭ってそれに近付く。

 それは、所々傷が目立つ小型のビデオカメラだった。手に取り、スイッチを押すとキュイーンという産声と共にモニターが目を覚ます。何故こんな所にこんな物がと思い、上へ視線をやるとそこは古い店構えのジャンクショップだった。このビデオカメラは商品らしく、黒一色のボディに『中古品 キズ ¥12,000』と書かれた緑色のタグが付いていた。

 私はそれを持って店内に入り、店の人の前で先生に貰った封筒を開ける。一万円札が二枚…足りる。迷うことなくビデオカメラを購入すると足早に店を後にする。泣きべそをかいた顔をまじまじと見られたくないというのもあるけど、それよりも僅かな希望を手にしたことが嬉しくて堪らなかった。

 あの失礼な警官は最後に証拠があればみたいなことをほざいていた。なら、このカメラで先生のレイプ行為を盗撮して、それを提出すれば今度こそぐうの音も出ないはずだ。

 上手く隠しさえすれば、先生の治療は勝手に始まる。後は先生の目を盗んでこれを警察に出せば、全てが終わる…

 そう思い立った私は、他の店も、都会の景色も楽しむこともせずに病院まで脇目も振らずに向かう。服とか下着とか買っても良かったが、どうせ先生に破かれるのがオチだし、設置するなら今日中に済ませたい。

 今日は病院は休みなので誰もいない。窓ガラスでも破って、中に侵入すれば泥棒の仕業と思われるはずだ。街に出ていた私に疑いの目を向けられることはないはずだし、隠すのなら今日が絶好のチャンスだ。

 絶望の淵に落とされた中で唯一の光を手にした私の足取りは軽く、歩いているのに風を切っているかの様に速く感じた。

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