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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第6章 心中サアカスと惑溺のグランギニョル
 開かれた真直ぐで長い足の付け根が、引きつって筋を浮かべる。

 薄い尻と、腰が触れた。薄い腹の内側で、赤くめくれた粘膜が、ずぷ、あからさまな音をたてて、あまく、あまくふるえる。陽色は、薄い腹の下、ほんのわずかに浮いた腰骨をつかみ、きれい、きれい、と幾度も繰り返した。

「は、ァ、あ、んん、!」
「ん、うう、ここ、おれ、は、はいり、たい、」

 薄い腹、臍の下、を撫でる。皮膚越しにも、内側が煮えたぎるように熱くしびれているのは、ぼんやりと伝わるので、本人の感じている熱はいかがばかりなのだろう。

 あつい。

 譫言のように繰り返し呻いて、力なくリネンを蹴る少女と、陽色は目を合わせた。

 ここ。ここがいい。

 ぱちり。目があった。

 紅色のひとみは、泣き濡れて涙の膜を湛えている。おぞましくて、奇妙で、歪で、それでも、とびきりうつくしい、真赤。

 鼓動が跳ね上がる。それがゆるりと細められているのを見て、リオはようやく、己がこくこくと何度も頷いていることに気づいた。

「おれ、あんたのあかちゃんに、なりたい、じゃなくて、」

 薄い腹が、ひくひく、震えた。ぽってりと腫れたくちびるが、とろりと開く。

「あんたに、あかちゃん、うんでほしい」

 その言葉の意味するところは、すぐに分かった。分かったはずなのに、脳が導いた単語はひとつだけ。

 うれしい。

 あんまりに単純な言葉で、頭がいっぱいに満たされる。何かを考えている余裕など微塵もないはずなのに、それは、すとんとリオの中に落ちた。

「わた、し、も」

 閨の熱に浮かされていない、普段通りの声色。

 真赤なひとみから、またしずくがひとつぶ。もしかしたら今まで泣けなかった分を、今こうして泣いているのかもしれない。陽色は、それでも、投げ出された体をもう一度両手でつかみ、中を少しずつさすることはやめない。ゆっくり、ゆっくり、からだに形を覚えてもらえるように。あまりにゆるやかにするものだから、一度は確かになったはずの意識が、またゆっくりと蕩けてゆく。

 もう腹の中全てが、熱くて苦しくて仕方ない。いれられたものを、奥まですべて、呑みこんで、はなさない。
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