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聖愛執信、或いは心中サアカスと惑溺のグランギニョル
第6章 心中サアカスと惑溺のグランギニョル
「あ、ぅ、ひ、」
「う、ぅう、」

 初夜は快楽より苦痛が勝ると云うが、昨夜の戯れも数に合わせれば、二日かけて丹念に丹念に開かれたからだは、さして苦痛を訴えることもなく、やたらとすんなり、入っていく。

 神さまが特別に創りたもうた、完璧な彫刻のようなうつくしいからだが、湿度を持った性の香りにあてられて、たかがお人形のために、開かれてゆく。

 それが、奇跡のように、感じられる。

 人体とは存外柔らかいものであるのだ、と、場違いにも少しだけ、リオは感動した。しかしその感動は、次いでやってくる、たとえるなら内側から征服されてゆくような、あまったるい感覚に、押しつぶされてしまった。

 股座、下腹、肋骨の下まで辿られている。ような、気が、する。指や舌とは比べものにならないほどの質量、熱。苦しいだけのはずなのに、何故だか、痛いような、痒いような、切ないような。

 この感覚は、そう、気持ちいい。

 くちの粘膜が、あつくとろけて、あまく火照って、どうしようもない。何事かを云おうとしても、舌が縺れてまともな発音にならない。

 吐く息の熱さに、眩暈がする。

 さして丈夫ではないからだが、腹の中の異物を追い返そうとしたのか、或いは自らを犯す雄を迎えいれるためなのか、きゅう、締め付けるのを感じた。

「……こうしてると、身長なんて、関係ないよ、」
「ん、ぅう、ぁう、」
「ふふ、いいこ、いいこ……、ん、はふ、」

 ひゅう、ひゅう。

 うたうような囁き。熱を孕んだ吐息。

 ちいさいはずの、骨の浮いたはずの、何故だか頼もしく感じる背中にしがみついた。頭をなでられるたびに、喉の鳴る音がする。

 それが目の前の人形のものではなく、己のくちびるから漏れ出たそれであることに、リオは驚愕した。先程から、と云うか、彼が勢いよく団長を蹴飛ばしたあたりから、可愛い、あいらしい、はずの、お人形が、やたらと格好良く見えてたまらない。
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