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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第1章 かがみぷれい
 立ったまま、後ろから挿入されている。

 体幹を鍛えていてよかったな。最初こそそんなことを考える余裕があったリオも、今となっては声を抑えることすらできない。足もとがぐらついてしまうのを、目の前の鏡に手をつくことで耐える。

 そう、鏡。

 曇のひとつもない玻璃は、リオの姉が、正確に云えば雅弥がくれたものだ。お客さんが雅弥くんにって渡してくれたけど、うちにはこんなものを置く場所がなくて。そんなことを云いながら、時計塔の地階の一角に、勝手にこのばかみたいに大きな鏡を置いていった姉の姿を、今でもリオは鮮明に思い出せる。

 ひやりとした冷たさに顔を上げれば、陽色の紅いひとみではなく、快楽で今にもとろけおちてしまいそうな己と目が合う。

 いつもより、深く入り込まれている。後ろから抱きしめられて、支配されている。それを、悦んでしまっている。まざまざと見せつけられたような気になって、勝手にからだが反応を示す。

「りお、みて、みて、りお、すっごくきもちよさそうだよ、」

 陽色は、あどけない声色で、あいらしい口調で、全く可愛くないことをしている。リオの乳頭を指でつまみながら、中を蹂躙するかのように腰を大きく回して。小刻みに突き上げられると、身を震わせながら鏡に爪を立てることしかできない。

 一体その体力はどこから湧いて出るのだね。

 残念ながらその疑問がくちをついて出ることはなかったが、仮にリオがそう訊いていたのなら、陽色は迷いなく、あんたのせいだよ、と云っただろう。連日連夜の行為が影響を与えているのはもちろんのこと、毎日三食美味しいご飯を食べ、いずれ舞台に戻るときのためだとか何とか云って、ここ最近は空いた時間をすべてからだを鍛えるのに使っている。遅い成長期が訪れた陽色は、ゆっくりと、着実に、大人の男になりつつあるのだ。

「や、ぁ、あ、ッ、」

 と云うか、本来なら今頃二人で出かけているはずだったのだ。そしてそもそも、「ずっと縫物ばかりしていたら気が詰まっちゃうよ」とリオを誘ったのは陽色だったはず。それがいったい、なぜこうなってしまっているのだろう。
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