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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第6章 ありあ
 背中のリネンはいい加減よれてぐちゃぐちゃになり、寝台から半ば垂れ下がってしまっている。体温が上がって、息苦しい。胸を喘がせながら、リオは重たい腕を持ち上げて、つやつやとした黒髪を撫でた。脳みそが詰まっているのかも怪しい、小さな頭。リオの手を両方使うとすっぽり覆ってしまえそうだ。

「ふああ、急になにするの、」
「ふん」

 なにするのと云いながら、黒い頭を手のひらに擦りつけてくる。色の薄い耳朶と目許に初めて朱がさして、小さなくちびるからふわり、あたたかな吐息が零れた。

「随分気持ちよさそうじゃあないか」

 何も別に、私じゃなくてもいいだろうに。

 リオは、それをくちにはできないでいる。この子がよくてもリオはよくない。それを知ってか知らずか、陽色はうんうんと妙な声音で唸っている。

「なでなでもいいけど、おれ、リオのお腹の中すきだもん」

 もういっそのことこの腹を捌いて見せてやろうか。ふいにそう思って、リオは己に舌を打つ。面倒がってはならぬとわかってはいても、あまりにも伝わらない。幸いにしてこの部屋には大きな裁ちばさみがある。取っておいでよ、君に見せてやろう。砂糖もスパイスも詰まっていないこのからだを。

 そうしたら少しは、なりそこないの少女が何で出来ているかわかるだろう。
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