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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第6章 ありあ
窓から射し込む光に、白いからだが浮かび上がっている。
陽光を束にしたような、ふわふわした長い髪。朝日の眩しさに少しも負けぬ、夜明けの色のひとみ。
目覚めてふいに衣装の案でも浮かんだのだろうか。ヴェルヴェットやサテンや作りかけのフリルにほつれたリボン、紅紫に黒に灰、優しい桃色に鮮やかな黄。碧瑠璃やら何やら、色とりどりの端切れと作りかけのドレスコートと、布の山の真ん中で、彼女は揚々と歌っている。高慢ちきな猫のようにつんと顎を反らし、あらわになった首筋も、肩も、胸も、不器用に折りたたまれた長い脚も気にしたふうもない。
女にしてはかなり丈高いからだに抗うようにして、己の声と世界を夢中で追い掛ける様は、まるで小さな女の子のひとり遊びだ。
私の歌を聴いて!
やたらめったらめちゃくちゃにしたくなるようで、無性にいたたまれなくて、とびきりかわいらしい光景だ。陽色は我知らず微笑んでいた。それにしても、ご主人さま、やっぱりすごいよ。なんなのその高音。どこから出してるの。
放っておくと、このひとは屹度いつまでも歌っている。夜も明けたばかりの、冷たい空気に肌をさらしたまま。いつまでも聞いていたいけれど、こちらを気にしてほしい気もする。気にして歌ってほしい。
「ご主人さま」
陽色はおっとりと声をかけた。
ぴたり、歌声が止まる。ご主人さま、こんなはよから歌ってたら、また亡霊に間違えられちゃうよ。夜明けの色がこちらを振り仰いだ。
陽光を束にしたような、ふわふわした長い髪。朝日の眩しさに少しも負けぬ、夜明けの色のひとみ。
目覚めてふいに衣装の案でも浮かんだのだろうか。ヴェルヴェットやサテンや作りかけのフリルにほつれたリボン、紅紫に黒に灰、優しい桃色に鮮やかな黄。碧瑠璃やら何やら、色とりどりの端切れと作りかけのドレスコートと、布の山の真ん中で、彼女は揚々と歌っている。高慢ちきな猫のようにつんと顎を反らし、あらわになった首筋も、肩も、胸も、不器用に折りたたまれた長い脚も気にしたふうもない。
女にしてはかなり丈高いからだに抗うようにして、己の声と世界を夢中で追い掛ける様は、まるで小さな女の子のひとり遊びだ。
私の歌を聴いて!
やたらめったらめちゃくちゃにしたくなるようで、無性にいたたまれなくて、とびきりかわいらしい光景だ。陽色は我知らず微笑んでいた。それにしても、ご主人さま、やっぱりすごいよ。なんなのその高音。どこから出してるの。
放っておくと、このひとは屹度いつまでも歌っている。夜も明けたばかりの、冷たい空気に肌をさらしたまま。いつまでも聞いていたいけれど、こちらを気にしてほしい気もする。気にして歌ってほしい。
「ご主人さま」
陽色はおっとりと声をかけた。
ぴたり、歌声が止まる。ご主人さま、こんなはよから歌ってたら、また亡霊に間違えられちゃうよ。夜明けの色がこちらを振り仰いだ。