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性愛執心、或いは劣情パレヰドと淫欲のコンキスタドール
第6章 ありあ
 夢の中で何かを掬い取った気がして目が覚めた。

 素肌に触れるリネンは、柔らかく温かく己以外のからだの温度が染みている。鴉の濡れ羽色の髪。真珠を砕いて丁寧に塗り込めたような白い頬。ひとみの印象がないせいで、吸い込まれるような不気味さはない。

 きれいなだけは、とびきりきれいに繊細に整った容貌。

 痩せぎすのからだを仔猫のようにまるめた少年は、安心しきって眠りこけている。よくも己のような人間の横で、これほど眠れるものだとリオは思う。

 夜更けに彼から受けたくちづけを思い出す。こちらの脚を持ち上げたり手のひらでもって腕を押さえつけたり、他の仕草は年相応かそれ以上に乱暴なくせに、くちづけだけはそうっと、音すらせぬほどにやさしくする。

 己のくちびるを指先で触ってみてから、リオは身を起こした。触れたくちびるの薄さと冷たさは、いつも通りに期待はずれだ。ほころぶ薔薇の花びらのように、可憐であればよいと云うのに。

 寝台を覆う黒いレエスを掻き分け、床に脚を落とす。毛足の長い絨毯を裸足で踏みしめ立ち上がる。

 部屋の一角に、大きな姿見が置いてある。蔓薔薇の意匠に縁取られたそれの前に立った。

 相変わらず、何やら歪な生きものが映っている。

 童話の魔女のようにやたらと広がる金色の髪。やや切れ長すぎる紫色の眼球。白い手足は必要より余計に長く伸びて、ついでに身の丈も望むより幾らも余分に高い。靴を履けばそこいらの男より背が高くなるこのからだは、美しいだけは美しいけれど、理想の美とは程遠い。

 もう少し小さくて愛らしい方がよかった。この髪もひとみも好きだけれど、黒い方がよかった。そうすればきっと、気兼ねなく彼と結ばれることができたのに。

 部屋に飾っているお人形たちのように、髪を結ったり切ったりしないのは、恐ろしいほどそれが似合わないから。ものをくちに入れ咀嚼し飲み込むことは得意ではないというのに、どう云うわけか余分に丈が伸びてしまった。

 浮き上がって見える腰骨に触れる。それから腹へ。薄い皮膚の下に、空っぽの内臓の気配。そういえば昨夜、彼はここに何も吐き出さなかった。気付いてしまうと、何とはなしに寂しい気持ちが湧いてくる。

 鏡の向こうの魔女は無表情だ。目つきがほんとうにきついね。少しは笑って見せたらどうかね。それでなくとも怖がらせてばかりじゃあないか。
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