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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第5章 5章 陰謀渦巻く舞踏会
「ねぇ、あの子ってどこの子かしら?」
「知らないわ、あんな田舎者」
「私も。なんであんな子がラウル様と……」
「あんな田舎娘、ラウル様にふさわしくないわ」
 自分を嘲笑う彼女達に物申したいが、そんなことをして騒ぎになったら、ラウルの名前に傷がつく。カミリアは下唇を噛み、その場を耐え忍ぶ。

「ねぇ、貴女。おひとりかしら?」
 鈴のような可愛らしい声に顔を上げると、小柄で愛らしい女性がカミリアを見上げていた。全体的に色素が薄く、触れたら壊れてしまいそうな、儚い印象がある。薄いブロンドの紙をゆるく巻き、薄い水色のドレスを着こなした彼女は、妖精のように可憐で愛らしい。

「えぇ、ひとりですが……」
「私もひとりなの。よかったら、向こうで一緒にお茶しない?」
 そう言って彼女は隅にあるこじんまりしたテーブルセットを手で示した。そこは窓から離れているせいか、薄暗い。自分はともかく、妖精のように可憐な彼女には似つかわしくないと思った。
「いいんですか?」
「よくなかったら、お誘いしないわ。ね、お茶しましょう。私もひとりなの」
 カミリアはうなずき、彼女と一緒に隅の席に座る。窓際のご令嬢達と離れているが、かえってそっちのほうが落ち着く。可憐な妖精は、鼻唄を歌いながら、ティーポットを傾けた。

「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
 カミリアが礼を言うと、彼女は口元に手を添え、上品に笑う。
「敬語はよして。嫌われ者同士、仲良くしましょうよ。まだ名乗っていなかったわね。私はリュゼ。リュゼ・フローレスよ」
「私はソニア。声をかけてくれてありがとう。ずっと田舎暮らしだったから、こういった場には慣れなくて……」
「田舎からこんなに素敵な人を見つけ出してくるなんて、ラウル様は人を見る目があるのね」
 手放しに褒められ、どう反応していいのか困る。ラウルからの褒め言葉はある程度耐性はついたが、女性からの褒め言葉は慣れていない。それに、自分よりもリュゼの方がよっぽど素敵な女性に思えた。
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