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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第5章 5章 陰謀渦巻く舞踏会
「明日の舞踏会にも、リュゼって子は来るだろうね。そういう子がいると、僕も心強いよ。明日、紹介してくれる?」
「えぇ、もちろん」
「カミリアの新しい友達に出会えるのは楽しみだね。夜も遅いし、そろそろ寝ようか。いい話が聞けてよかったよ。おやすみ」
「えぇ、おやすみなさい」
 カミリアは自室に戻ると、ベッドにもぐり込んだ。疲れた身体を、羽毛が優しく包んでくれる。カミリアは満たされた心を抱え、そのまま目を閉じた。

 4日目、交友パーティも折り返し地点だ。この日はフェガリの小さな舞踏会場で仮面舞踏会が行われる。
 今日は紺色のドレスに身を包んだ。ラウルは黒い燕尾服を着ており、シックにまとまっている。そんなふたりを、多くの人々が遠くから眺めてうっとりしていた。
「ラウル様は何を着てもお似合いですわ」
「マルティネス公爵の隣にいる女性は、どこのご令嬢なんだ? 是非とも踊ってみたいものだ」
 もちろんカミリアを疎む視線もあったが、賞賛の声と視線が、それらをかき消してくれた。

「ソニア」
 鈴のような可愛らしい声に呼ばれる。そちらを見ると、リュゼがこちらを見上げて微笑んでいる。淡いピンク色のドレスに見を包み、蝶を模ったマスカレードマスクをつけている。その姿は本当に妖精のようだ。
「リュゼ、ごきげんよう」
「君がリュゼか。僕のソニアと仲良くしてくれてありがとう。僕は……」
「ラウル様ですよね? もちろん存じておりますわ。フェガリ貴族の憧れの的ですもの」
 リュゼは尊敬の眼差しをラウルに向ける。その中に恋心に似たものを感じ取り、カミリアは複雑な気持ちになる。心なしか、ふたりの距離も近いように見える。

「その分、敵も多いけどね」
「ラウル様にかかれば、どうということはないでしょう?」
 にこやかに話していたリュゼは、目を伏せ、ため息をついた。その姿は妙に色っぽく、同性のカミリアもドキッとした。
「もう少しおふたりと話していたいのですが、会わなければならない方がいますので、失礼します。ソニア、またあとでお話しましょうね」
「えぇ、そうね」
 リュゼはドレスの裾をつまんで優雅に挨拶をすると、ふたりの元から去っていった。もう少しリュゼと話していたかったという気持ちと、行ってくれてよかったという気持ちが混在し、自分の心境に戸惑う。
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