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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
 そんな日々が2週間続き、カミリアはストレスで窒息寸前まで追い詰められた。
「騎士団の皆、どうしてるんだろう?」
 ハーディやラート、他の騎士達のことを思い出す。せっかく彼らと距離を縮められたのに、離れ離れになってしまって寂しい。ある種のホームシックが、カミリアを更に追い詰めていく。

 彼女を追い詰められているのはそれだけではない。ほとんどの授業は上手くいっているが、ダンスだけは思うようにいかない。サージュの教え方は丁寧で分かりやすい。ステップも頭に入っているし、ひとりでやった時はそこそこできているように思う。けど、サージュに相手をしてもらった途端、上手くいかないのだ。

「せめてラウルがいれば……」
 ラウルの顔を思い浮かべ、ため息をつく。ここ1週間ほど、ラウルの姿を見ていない。食事の時ですら姿を見せないのだ。ルナに聞くと、公務で忙しくて部屋に籠りきりになっているらしい。おかげで数少ない息抜きであるナイフの稽古が出来ていない。

 カミリアは今、世の女性達に向かって大声で叫びたい気分だ。「屋敷暮らしも楽じゃないんだから!」と。
「こんな日々が、はやく終わりますように」
 カミリアは月に祈り、眠りについた。

 翌朝、食堂に行くと珍しくラウルの姿があった。彼はカミリアの姿を見るなり、顔をほころばせた。
「やぁ、久しぶりだね。ソニア。元気にしてたかい?」
「えぇ、元気にしてたわ。ところで、その服装は……」
 いつもはシャツにトラウザーズだが、今のラウルは庶民と同じような服装をしている。

「朝食が終わったら、ふたりで出かけようと思ってね。ソニアの分も、用意してあるよ」
「またお忍びですか? この忙しい時期に」
 嬉しそうにくるりと回るラウルに、ルナは呆れ返る。ふたりのやり取りを聞いて、カミリアはワクワクしていた。朝食が終わったら、この屋敷から出られる。行き先が分からなくても、出られるだけで心の救いになる。
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