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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅤ(覚醒)
 まあ、今となっては言っても詮のないことではある。あの時、直輝は紗英子が告白しても断ろうと思えば断れたのに、それを受け容れ紗英子と付き合い始めたのだから。むしろ有喜菜が先に告白していても、直輝が受け容れたかどうかは疑わしく、かえってフラレて気まずくなるよりは、気心の知れた友達関係を維持できたことに感謝するべきなのかもしれない。
 運命とは結局、そうなるべくしてなるものだというのが有喜菜の持論だ。確かに様々な選択肢があり、それを選びながら生きていくわけだが、とどのところは選び取ったのが最初から自分の人生であり運命であったとしか言いようがない。
 なので、もし、ああしていたらとか、あの時、こうしていたらと後から愚図愚図と考えるのはあまり好きではなかった。考えて変えられるものならば良いが、変えることなんてできはしないのだから、所詮時間の無駄ではないか。過去を振り返って後悔する暇があるほどなら、まだ決まってはいない未来について考えた方がよほど効率的というものだろう。
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