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また桜は散り過ぎて
第15章 散ってもまた、桜は咲く
最後のドアを開けた私の顔を見た小西さんは、目いっぱいの笑顔を作って迎えてくれた。
とても無理している、ぎこちない笑顔。
「いらっしゃい」
空いていたいつものテーブル席に座ると、すぐに小西さんがやって来た。
「こんばんは。とうとう今日で最後になりました。
なのでチャーハンとケーキセットと両方いきます」
「はい、いつも以上に美味しく作りますよ」
さっそく厨房に立つ小西さんの背中を眺めながら、こみ上げる涙をそっとぬぐった。
チャーハンを食べ終え、チーズケーキに手を付け始める頃には客は私一人になっていた。
いつかのように小西さんは外灯を消し看板をしまい、閉店の札をかけた。