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また桜は散り過ぎて
第15章 散ってもまた、桜は咲く
二人きりになったので、心置きなく自分の気持ちが話せる。
カラになったカップをお皿に戻してから、店の隅々に顔を向けた。
「本当に居心地のいい喫茶店でした。そして居心地よくしてくれるマスターでした」
隣りのテーブル席に腰を下ろした小西さんも店の隅々に視線を送っていた。
「自分で言うのもなんですが、いい店になったと思います。常連さんもたくさんできたし。
でも一人減ってしまうのが寂しいです」
私を見た彼の目は、力強かった。
「このお店と小西さんに出会えたこと、幸せでした。そして・・
私も小西さんの事が好きです。
次第に魅かれて、好きになりました。
あなたも同じ気持ちなのかもしれないと思うと、すごく嬉しい・・だけど、
ここで道が分かれてしまうことは残念だけど、
あなたと心が通じ合っていることがわかっただけでも私は幸せです」
勝手に涙はこぼれた。
恥ずかしくて目を逸らしたけど、小西さんの顔をそっと見てみると、
彼も目じりを指で拭っていた。