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第15章 散ってもまた、桜は咲く

　透明な沈黙の最中、なぜか余計な事を思い出してしまった。
それを思わず口に出してしまった。
「私・・桜が咲く頃に散ってしまうんです。
　前に付き合っていた人と別れたのも桜が咲いている時期でした・・また桜が散っちゃう」
　諦めの気持ちが顔を上げさせるなんて、神様も意地の悪い事をするものだ、と
天井のランプに視線を向ける。すると小西さんが、違いますよ、と言った。
「桜は散ってもまた来年花が咲く。散りっぱなしじゃあない。
　これからもあなたは私の大切な友人として咲いて散ってを繰り返しますよ、きっと」
　一気に涙があふれ、こぼれた。なんて深い心の持ち主なのだろう。
この人と結ばれたらどんなに幸せを感じる事だろう。
今までの自分を捨てて別の人間になりたいと思った。
そしてこの出会いを仕組んだ運命を恨んだ。

　少しの間、自然と涙が止まるまで、自分の手のひらを見つめていた。
その手をぐっと握りしめ、別れの瞬間のために力を入れた。
「そろそろ帰ります。また・・このお店に来られる時が来たら、
　飛び切り美味しいコーヒーを飲ませてください」
せっかく引っ込んだ涙がまた溢れたけど、
最後は笑って店を出ようと決めてきたのだからと、精一杯笑って見せた。