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Memory of Night 2
第10章 嫉妬

「何してたかはアイツに聞けよ。吐いて少し休めばラクになるだろ。あたしは店に戻る」

 サイドブレーキを引き、ギアを入れたところで、春加は思い出したように晃を振り向いた。

「そうだ、あともう一個。あの土産に渡した縄、使ってくれたみたいだな。性生活も楽しんでんなら何よりだけど、素人がやると危険だ、気をつけな」

 そこで再び言葉を切る。
 晃の表情を探るように黙って見つめてくる春加の黒で縁取られた目からは心のうちが汲み取れなかった。だから余計に、晃の心を逆撫でする。
 何秒か間をあけて、まるで煽るように言葉を続けてくる。

「ーーなんなら教えてやろうか、縛り方。あたしは専門じゃないけど、亀甲縛りくらいならできるよ」

 どうしてそれを、と思う。店の制服は詰襟だし、痕が見えることなどないはずなのに。縛り方までバレているなんて。
 ラブホテル、という単語が脳裏に蘇る。
 だけどすぐに心中で首を振った。
 宵に限ってそれはないだろう。

「……結構です」

 晃は春加の車から完全に降りた。足がすっかり濡れてしまった。
 ドアを閉めると、今度は助手席の窓がわずかに開く。

「じゃ、次あいつ月曜バイトだから、伝えといて」

 それだけ残し、春加の車は去っていった。
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