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Memory of Night 2
第13章 投影

 キーをかけて抜くタイプの鍵だが、肝心のそれは更衣室のズボンのポケットだった。
 取りに走ろうとする宵を、あまり見かけない店員らしき女性は止めた。

「いーよ、その鍵のタイプならピンで開けれるだろうから」
「え?」

 それは、俗に言うピッキングというやつなのではないか。

「ちょっと借りる」

 宵からの返答は待たず、キャップ帽を被った女性スタッフはそのままキッチンを飛び出していった。
 そして、ほんの二十分たらずで買い出しから戻ってきた。
 両手にビニール袋を一つずつ提げて。
 中身は酒やジュースなどが多かった。卵もある。かなりの重量になってうだが、その女性は軽く息を弾ませている程度で、やすやすと袋を二つ調理台の上へと乗せる。
 キッチンのスタッフ達がバタバタと補充にまわる中、一人が言った。

「すみません、ショーの前に買い出しなんて行かせてしまって。きちんと材料も確認しておけば良かったんですけど」
「これだけ人が入ることなんてないからね、スタッフのせいじゃないよ。あたしも軽いウォーミングアップになったし、気にすんな。宵、チャリありがと。やっぱ車より早いな」
「……え?」

 他のスタッフの発言と、自分を呼ぶ呼び名でようやくその人物が誰なのかピンときた。
 ーー春加だ。
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