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Memory of Night 2
第13章 投影

「何その変装。誰かと思ったら」
「変装なんてするか、ボケ。キャップだけだろーが。晃から借りてるチャリなんだろ? 誰かわかんないやつに貸すなよ」

 珍しくド正論だった。
 春加がキャップ帽を取ると、セミロングの茶髪が緩く広がる。
 帽子の下の顔にさらに驚いた。
 いつもの目の回りを囲むアイラインが無かった。瞳の色は薄茶色。釣り上がってきつそうに見えていた目付きが今日は柔らかかった。くっきりと大きい目はどちらかといえば垂れ目だ。
 淡いオレンジ色のシャドーが塗られた目元は華やかだがケバくはなく、チークなのか自転車を漕いできたあとだからか、頬もうっすらとピンク色。本当に、普段とは別人のようだった。

「…………わかんねーよ、顔全然違うじゃん」
「ハルちゃんのナチュラルメイク。絶対こっちの方がいいよね」

 亮が割って入って答えると、春加はその顔を横目でにらみつけた。

「ーーさて、そろそろ着替えて始めようかね」

 あと十分ほどで幕が上がる。
 春加は大きく伸びをし、帽子を深くかぶり直した。

「待ちに待ったショータイムの始まりだね」

 ステージの袖へと歩を進める春加の後ろ姿を見送りながら、亮はにっこりと笑顔を見せた。
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