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Memory of Night 2
第14章 夏休みに向けて

「まあ、一旦この件は保留にしましょう。どのみちまったくの素人が簡単に踊れるようなものでもないですし、どうしてもショーにと言うなら、何か踊り以外の案をお考えいただけると。それはさておき、アメリア先生のショーを、お客様もスタッフも楽しみにしております。また改めて、出演日のご相談をさせていただけると嬉しいです」
「Oh、OK、アリガトネ! マタ連絡スルネ! Bye、亮、春加、宵」

 去り際、宵は両頬を掴まれ口付けられていた。
 完全に不意打ちだった。ちゅ、と軽く音を立てられ金髪の外国人女性、アメリアは去っていく。まさにハリケーンのような騒がしい人だった。
 ようやくキスされたという事実が頭まで届き、瞬時に過(よぎ)ったのは晃の顔だった。

(……晃にバレたら殺される……)

 背筋を悪寒が走っていく。

「……いいもん見ちゃった。晃にチクろ」
「やめろって! 外国じゃただの挨拶だろ?」
「挨拶ならいいじゃん。それも言っとくわ、宵が、チューは挨拶だからしてもいいって言ってたよーって」
「そんな言い方してねーじゃん!」

 不意打ちにキスされたんだから宵としてはどうしようもなかったし、アメリアとしてもそこに他意などなく挨拶のつもりだろうという、そういう意味なのに。
 どこをどう解釈すればそういう言い方になるのか。
 宵と春加のやり取りに、苦笑混じりに亮が割って入った。

「ハルちゃん、小学生のいじめっ子みたいなことはやめな。ーーアメリア先生、キス魔だから安心して。ここのスタッフみんなされてるから」

 キス魔。それは安心していいのか。

「まあ、挨拶だよ、ただの。だから気にしなくていいよ。さて二人も、そろそろ仕事に入ろっか」
「はーい」

 亮に促され、宵はスタッフルームのさらに奥の更衣室へと入っていったのだった。
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