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Memory of Night 2
第3章 甘い遊戯

「珍しいね、宵が夕飯作ってくれるの? 明日は雪でも降るんじゃない?」

 その声に飛び上がりそうになった。

「帰ってきたならただいまくらい言えよ」
「ただいま」
「……おかえり」

 晃は制服を脱ぎ、ハンガーへと引っかける。テーブルに備え付けてある椅子に無造作に放ってある宵の制服も、ついでのようにハンガーにきちんとかけ直した。これもいつもの流れだった。
 宵が一人で住んでいた頃は荒れていたこの部屋も、晃と住み始めるとそもそも散らかること自体がなくなった。
 いつもと同じ行動。だが晃の雰囲気は、いつもとは違った。

「怒ってんの? あの人は彼女でもなんでもねーよ。ただのバイト先の人」
「あの人って、赤いスポーツカーの歳上の女性のこと? へー。バイト先の人と、放課後会ってたんだ。俺に隠れて」
「違うって」

 宵は思わず包丁を置き晃を振り向いた。
 晃の声のトーンが変わったからだ。誤解されて幻滅されるのは嫌だった。春加とのやり取りの中でやましいものなど一つもない。

「バイト先まで、送り迎えしてもらってたんだ」
「送り迎え?」

 宵は流しに寄りかかり、気まずげに視線を逸らした。隠し通すのが無理なことはわかっている。肩の力を抜き、小さく息を吐いた。
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